【医師監修】赤ちゃんの「さい帯」トラブル、さい帯巻絡は本当にこわい?正しい知識と対処法

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お腹の赤ちゃんとママをつなぐ大切な命綱「さい帯」。妊婦健診で「首にさい帯が巻き付いている(さい帯巻絡)」と告げられたり、さい帯のトラブルについて耳にしたりして、不安を感じていませんか?この記事では医師監修のもと、さい帯の基本的な役割から、多くの方が心配するさい帯巻絡が本当に危険なのか、その原因や頻度、赤ちゃんへの影響を詳しく解説します。結論として、さい帯巻絡は決して珍しいことではなく、それだけで帝王切開になるわけではありません。過度に心配するのではなく、正しい知識を持つことが大切です。その他に知っておきたいさい帯のトラブルや、妊婦さんができること、出産後のケアまで網羅し、あなたの不安を解消します。

目次

さい帯とは 赤ちゃんとママをつなぐ大切な命綱

妊娠がわかると、お腹の赤ちゃんのことが気になりますよね。赤ちゃんが元気に育つために欠かせないのが「さい帯」です。一般的には「へその緒」として知られ、妊娠中のママと赤ちゃんをつなぐ、まさに「命綱」ともいえる非常に大切な器官です。

この章では、赤ちゃんの成長を支えるさい帯の基本的な役割や構造、そして妊娠週数による変化について詳しく解説します。

さい帯の役割と構造

さい帯は、胎盤と赤ちゃんのへそをつなぐ白いひも状の組織です。子宮の中で赤ちゃんが自由に動き回れるよう、羊水の中に浮いています。その主な役割は、ママの血液から作られた酸素と栄養を赤ちゃんに届け、代わりに赤ちゃんから出た二酸化炭素や老廃物を胎盤へ送り返すことです。

一見するとただのひものように見えますが、その内部は非常に精巧な構造になっています。さい帯の中には3本の血管が通っており、それらを「ワルトン膠質(こうしつ)」というゼリー状の物質が保護しています。このワルトン膠質がクッションの役割を果たすことで、赤ちゃんが動いても血管が圧迫されたり、ねじれたりするのを防いでいるのです。

3本の血管の役割は、それぞれ以下のようになっています。

血管の種類本数役割
さい帯静脈1本胎盤から赤ちゃんへ、酸素や栄養を豊富に含んだ血液を運ぶ。
さい帯動脈2本赤ちゃんから胎盤へ、二酸化炭素や老廃物を含んだ血液を戻す。

このように、さい帯は赤ちゃんがお腹の中で健やかに成長するための生命維持装置として、24時間休むことなく働き続けています。

妊娠週数によるさい帯の変化

さい帯は、赤ちゃんの成長に合わせて妊娠期間中に変化していきます。特に「長さ」と「太さ」は、妊娠週数を経るごとに大きく変わります。

妊娠初期にはまだ細く短いさい帯ですが、赤ちゃんの体が大きくなるにつれて、徐々に長く、太く成長します。多くの場合、妊娠28週頃までに長さの成長はほぼ完了し、その後は太さが少しずつ増していきます。

時期長さの目安特徴
妊娠中期(20週頃)約25cm~30cm赤ちゃんの成長とともに急速に長くなる時期です。
正期産(37週以降)平均約50cm~60cm長さや太さが安定します。ただし、長さには個人差が非常に大きく、35cm未満の場合もあれば100cmを超えることもあります。

さい帯の太さは、出産時期には直径約1.5cm~2.0cmほどになります。これも個人差があり、血管を保護するワルトン膠質の量によって変わってきます。妊婦健診の超音波(エコー)検査でさい帯の様子を見ることはできますが、その全長を正確に測定することは困難です。平均的な長さや太さはあくまで目安として捉えておきましょう。

多くの妊婦さんが心配する「さい帯巻絡」の正しい知識

さい帯巻絡(さいたいけんらく)の安心ポイント へその緒(さい帯) O₂ 窒息の心配は少ない 赤ちゃんは肺呼吸ではなく、 へその緒から酸素をもらっています。 ゼリー状のクッション 「ワルトン膠質」という物質が 血管の圧迫を防いでいます。 よくあることです 全分娩の約20〜30%に見られます。 3〜5人に1人の割合です。 ※分娩中はモニターで赤ちゃんの心拍を常に確認しているので安心してください

妊婦健診の超音波(エコー)検査で「赤ちゃんの首にへその緒(さい帯)が巻いていますね」と言われ、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。大切な赤ちゃんに何かあったらと心配になるのは当然のことです。しかし、さい帯が首に巻き付く「さい帯巻絡(さいたいけんらく)」は、実は多くの妊娠でみられる現象です。まずは正しい知識を身につけ、過度に心配しすぎないようにしましょう。この章では、さい帯巻絡の原因や赤ちゃんへの影響、分娩方法について詳しく解説します。

さい帯巻絡とはどのような状態か

さい帯巻絡とは、その名の通り、へその緒である「さい帯」が赤ちゃんの体の一部に巻き付いている状態を指します。巻き付く場所で最も多いのが首(頸部巻絡)ですが、胴体や手足に巻き付くこともあります。妊婦健診の超音波検査で確認されることが多く、妊娠中の赤ちゃんの約4人に1人は経験すると言われています。

「首にへその緒が巻いている」と聞くと、大人のように「首が締まって苦しいのでは?」と想像してしまいますが、お腹の中の赤ちゃんは肺で呼吸をしているわけではありません。赤ちゃんはさい帯を通じてママから酸素や栄養を受け取っているため、首にさい帯が巻いていること自体が、すぐに窒息につながるわけではないのです。

さい帯が首に巻き付く原因と発生頻度

さい帯巻絡が起こる主な原因は、赤ちゃんが子宮の中で元気に動き回ることです。赤ちゃんは羊水の中で手足を動かしたり、回転したりする過程で、自然にさい帯が体に絡まってしまうことがあります。これは赤ちゃんの成長が順調である証拠とも言えます。

その他、以下のような場合に起こりやすいとされています。

  • さい帯が通常より長い場合
  • 羊水の量が多い(羊水過多)場合
  • 赤ちゃんが活発によく動く場合

これらは赤ちゃんの個性や妊娠の経過によるものであり、妊婦さんの生活習慣や行動が原因で起こるものではありません。ご自身を責める必要は全くありませんので、安心してください。

発生頻度については、全分娩の約20〜30%にみられる、比較的よくある現象です。つまり、3〜5人に1人の赤ちゃんは、さい帯が体に巻き付いた状態で生まれてきている計算になります。一度巻絡が確認されても、その後の健診で自然に取れていることも珍しくありません。

さい帯巻絡は本当に危険?赤ちゃんへの影響を解説

さい帯巻絡があると診断されても、ほとんどの場合は赤ちゃんに深刻な影響を及ぼすことなく、無事に出産を迎えることができます。さい帯には「ワルトン膠質」というゼリー状の物質があり、これがクッションの役割を果たして、さい帯が強く圧迫されるのを防いでくれています。

ただし、リスクが全くないわけではありません。特に注意が必要なのは、分娩が始まってからです。赤ちゃんが産道を下りてくるときに、巻き付いたさい帯が強く引っ張られたり、頭と産道に挟まれて圧迫されたりすることがあります。すると、一時的にさい帯の中の血流が悪くなり、赤ちゃんに送られる酸素が不足して、赤ちゃんの心拍数が下がってしまう(胎児機能不全)可能性があります。

しかし、分娩中は「分娩監視装置(NST)」を用いて赤ちゃんの心拍数とママの子宮収縮を常にモニタリングしています。万が一、赤ちゃんの心拍数に異常が見られた場合でも、医師や助産師が迅速に体位変換を促したり、場合によっては吸引分娩や緊急帝王切開に切り替えたりするなど、適切な対応を取れる体制が整っています。ほとんどの場合、分娩中に自然にゆるんだり外れたり、あるいは巻いたままでも無事に出産に至りますので、医療スタッフを信頼して臨みましょう。

さい帯巻絡があると帝王切開になるのか

「さい帯巻絡があると帝王切開になる」というのは、よくある誤解の一つです。結論から言うと、さい帯巻絡があるという理由だけで、予定帝王切開の適応になることは通常ありません。多くの場合は、経腟分娩を試みることが可能です。

ただし、前述の通り、分娩の進行中にさい帯の圧迫が強まり、赤ちゃんの心拍数に著しい低下がみられ、回復しない場合(胎児機能不全)は、赤ちゃんの安全を最優先するために緊急帝王切開に切り替わることがあります。分娩方法の判断基準は以下の通りです。

分娩方法判断基準・状況
経腟分娩(原則)

さい帯巻絡が確認されている場合でも、分娩中の赤ちゃんの心拍数に問題がなければ、そのまま経腟分娩を継続します。これが基本的な方針です。

緊急帝王切開

分娩の進行中に、さい帯の圧迫などが原因で赤ちゃんの心拍数が著しく低下し、回復が見込めない「胎児機能不全」と判断された場合に、赤ちゃんの安全を確保するために行われます。

最終的な分娩方法は、分娩の進行状況や赤ちゃんの状態を総合的にみて、医師が判断します。不安な点があれば、事前に医師や助産師に質問し、分娩方針についてよく話し合っておくと良いでしょう。

さい帯巻絡だけではない 知っておきたいさい帯のトラブル

知っておきたい さい帯のトラブル 4選 1. 真結節(しんけっせつ) さい帯が結ばれてしまう状態 きつく締まると血流障害のリスク 2. さい帯下垂・脱出 ! 緊急性が高い 頭と産道に挟まれ血流が止まる危険 3. さい帯付着部異常 卵膜付着・前置血管など 血管がむき出しで損傷しやすい 血管 4. 過短・過長さい帯 過短 過長 過短:引っ張られて胎盤剥離のリスク 過長:巻絡や結節のリスク増

多くの妊婦さんが心配される「さい帯巻絡」以外にも、さい帯にはいくつかのトラブルが存在します。頻度は低いものの、中には緊急性の高いものもあるため、正しい知識を持っておくことが大切です。ここでは、さい帯巻絡以外の主なトラブルについて解説します。

さい帯に結び目ができる「真結節」

真結節(しんけっせつ)とは、赤ちゃんが子宮の中で活発に動くことにより、さい帯(へその緒)に本物の結び目ができてしまう状態を指します。全分娩の約1%にみられる比較的まれな現象です。

多くの場合、結び目はゆるく、赤ちゃんへの血流に影響を与えることはありません。しかし、分娩の進行に伴って結び目が固く締まってしまうと、赤ちゃんへの酸素や栄養の供給が滞り、胎児機能不全(いわゆる胎児仮死)に陥る危険性があります。

真結節は、妊娠中の超音波検査(エコー検査)で偶然発見されることもありますが、さい帯全体を観察することは難しいため、出生後に初めて判明するケースも少なくありません。分娩中は胎児心拍数モニタリングで赤ちゃんの状態を注意深く監視し、異常がみられた際には速やかに吸引分娩や緊急帝王切開などの対応がとられます。

緊急対応が必要な「さい帯下垂・さい帯脱出」

さい帯下垂(さいたいかすい)とさい帯脱出(さいたいだっしゅつ)は、さい帯が赤ちゃんより先に産道へ下がってしまう状態で、胎児の命に関わる極めて危険な産科救急疾患です。発生頻度は0.1~0.6%と非常にまれですが、迅速な対応が求められます。

これらの状態になると、赤ちゃんの頭と産道の間にさい帯が挟まれて圧迫され、血流が完全に遮断されてしまう恐れがあります。血流が途絶えると、赤ちゃんは深刻な低酸素状態に陥り、脳性麻痺などの後遺症や、最悪の場合は死に至ることもあります。

さい帯下垂とさい帯脱出の違いは、破水しているかどうかです。

状態定義緊急度
さい帯下垂破水前に、さい帯が赤ちゃんの先進部(頭など)より低い位置にある状態。高い(破水するとさい帯脱出に移行する危険性がある)
さい帯脱出破水した後に、さい帯が子宮口から腟内や外陰部へ脱出してしまった状態。極めて高い(一刻を争う超緊急事態)

骨盤位(逆子)や多胎妊娠、羊水過多などの場合に起こりやすいとされています。診断された場合は、ただちに超緊急帝王切開での分娩が必要となります。もし、ご自宅などで破水した際に、何か紐のようなものが外に出てきた感覚があった場合は、絶対に引っ張ったりせず、すぐに救急車を呼び、医療機関の指示を仰いでください。

胎盤への付き方が通常と違う「さい帯付着部異常」

通常、さい帯は胎盤のほぼ中央に付着しますが、まれに付着する位置がずれる「さい帯付着部異常」が起こることがあります。超音波検査で診断されることが多く、種類によっては注意深い管理が必要です。

種類特徴主なリスク
辺縁付着(へんえんふちゃく)さい帯が胎盤の端(辺縁)に付着している状態。大きな問題になることは少ないが、分娩時に圧迫されるリスクが通常よりやや高まる。
卵膜付着(らんまくふちゃく)さい帯が胎盤本体ではなく、周囲の卵膜に付着している状態。さい帯内の血管が卵膜上をむき出しのまま走行するため、圧迫や損傷を受けやすい。胎児発育不全、分娩時の血管圧迫による胎児機能不全、血管の損傷による出血。
前置血管(ぜんちけっかん)卵膜付着の一種で、むき出しの血管が内子宮口の上か、その近くを走行している状態。破水時に血管が破れ、胎児の血液が大量に失われる危険性が非常に高い。母子ともに危険な状態に陥る可能性がある。

特に「前置血管」と診断された場合は、妊娠中の安静や管理入院、予定帝王切開による分娩が選択されることがほとんどです。さい帯付着部異常を指摘された際は、医師の説明をよく聞き、指示に従うことが何よりも大切です。

さい帯が短い・長いことによるリスク

さい帯の長さには個人差がありますが、極端に短い場合や長い場合にもリスクが伴います。ただし、さい帯の全長を妊娠中に正確に測定することは困難であり、多くは分娩中や出産後に判明します。

過短さい帯(かたんさいたい)

さい帯が35cm未満など、異常に短い状態です。赤ちゃんが産道を下りてくる際にさい帯が強く引っ張られ、常位胎盤早期剥離(胎盤が剥がれてしまう状態)や、まれにさい帯が断裂するリスクがあります。また、赤ちゃんの下降が妨げられ、分娩が長引く原因になることもあります。

過長さい帯(かちょうさいたい)

さい帯が80cm~100cm以上など、異常に長い状態です。さい帯が長いと、赤ちゃんが動くスペースに余裕があるため、さい帯巻絡や真結節、さい帯下垂・脱出が起こるリスクが高まると考えられています。

これらの長さの異常は、事前に診断することが難しいため、分娩中の胎児心拍数モニタリングで赤ちゃんの状態をしっかりと監視し、異常があれば迅速に対応することが重要になります。

さい帯のトラブルに対して妊婦さんができること

さい帯トラブル:妊婦さんができること 1 予防と心構え:気にしすぎないことが大切 確実な予防法はありません。「寝方」や「姿勢」で悩む必要はなく、 偶発的なものなので、自分を責めずにリラックスして過ごしましょう。 ② 妊婦健診 医師の説明を正しく理解する 不安な点はメモして質問 (リスクや今後の見通しなど) ③ 胎動チェック 赤ちゃんからの「元気な便り」 日頃のパターンを把握する (胎動カウントの活用など) ! 要注意!すぐに病院へ連絡すべきサイン 「気のせいかも」「夜中だから」と遠慮せず、直感に従って連絡してください 急に激しく動き続ける 動きが弱い・減った 胎動を全く感じない すぐ電話!

さい帯のトラブルについて知ると、「赤ちゃんのために何かできることはないか」と考えるのは自然なことです。しかし、さい帯のトラブルの多くは、妊婦さん自身が何かをしたから起こるわけでも、何かをすることで予防できるわけでもありません。ここでは、さい帯のトラブルに対して妊婦さんができること、そして知っておくべき心構えについて詳しく解説します。

さい帯トラブルの予防法はあるのか

結論からお伝えすると、さい帯巻絡や真結節といったトラブルを、妊婦さん自身が直接的に予防する確実な方法はありません。さい帯が赤ちゃんの体に巻き付いたり、結び目ができたりするのは、お腹の中で赤ちゃんが元気に動いた結果として起こる偶発的な現象だからです。

インターネット上では「右向きで寝ると良い」「うつ伏せ寝を避ける」といった情報が見られることもありますが、特定の寝方や姿勢でさい帯トラブルを予防できるという医学的根拠は確立されていません。むしろ、不確かな情報に振り回されてストレスを溜めてしまうことの方が、妊娠生活にとってマイナスになる可能性があります。

予防法がないからといって、何もできないわけではありません。大切なのは、トラブルを予防することではなく、万が一の異常を早期に発見し、適切に対応することです。そのために最も重要なのが、定期的な妊婦健診と、日々の胎動のチェックです。

妊婦健診で異常を指摘されたときの心構え

妊婦健診の超音波(エコー)検査で、さい帯巻絡などの異常の可能性を指摘されると、誰でも大きな不安を感じるものです。しかし、まずは落ち着いて、医師からの説明を正確に聞くことが大切です。さい帯巻絡は多くの妊婦さんに見られるもので、そのほとんどは分娩時に問題となることはありません。

不安な気持ちで頭がいっぱいになってしまうかもしれませんが、ご自身の状況を正しく理解するために、以下の点を確認してみましょう。事前に質問したいことをメモしておくと、落ち着いて話ができます。

確認・質問しておきたいことの例
現在の赤ちゃんの状態(元気か、発育に問題はないか)
考えられるリスクはどの程度か
今後の健診はどのように進めるか(頻度や検査内容など)
日常生活で特に気をつけることはあるか
どのような兆候(胎動の変化など)があったらすぐに病院に連絡すべきか

医師は、超音波検査で得られた情報をもとに、現状と今後の見通しを説明してくれます。過度に心配する必要はありませんが、医師の指示に従い、決められたスケジュールで妊婦健診を受け、赤ちゃんの状態をしっかり見守っていくことが何よりも重要です。

胎動の変化に注意する

さい帯トラブルのサインを早期に察知するために、妊婦さんが自分でできる最も効果的な方法が「胎動のチェック」です。胎動は、お腹の赤ちゃんからの大切なお便りであり、赤ちゃんの元気度を示す重要なバロメーターです。

さい帯が強く圧迫されるなどして赤ちゃんが苦しい状態になると、胎動に変化が現れることがあります。「いつもと違う」と感じたら、それは赤ちゃんからのサインかもしれません。日頃から赤ちゃんの胎動のパターン(よく動く時間帯や動き方の癖など)を意識しておきましょう。

胎動の変化に気づくための一つの方法として「胎動カウント」があります。赤ちゃんが10回動くのにかかった時間を計測する方法で、毎日同じ時間帯にリラックスした状態で行うと、普段との違いに気づきやすくなります。

特に、以下のような変化を感じた場合は、自己判断せず、すぐにかかりつけの産院に電話で相談してください。

注意すべき胎動の変化対処法
急に、これまで感じたことがないほど激しく動き続ける時間帯や曜日に関わらず、ためらわずにすぐかかりつけの産院に連絡する
いつもより明らかに動きが弱い、または回数が減った
胎動をまったく感じなくなった

「気のせいかもしれない」「夜中だから迷惑かも」などとためらう必要は全くありません。赤ちゃんの命を守るためには、あなたの「おかしいな?」という直感が非常に大切です。何も問題がなければ安心できますし、万が一の事態でも迅速な対応につながります。

出産時と出産後のさい帯について

妊娠中、赤ちゃんとママをつなぎ、栄養や酸素を送り続けてきた「さい帯(臍帯)」。一般的には「へその緒」とも呼ばれ、赤ちゃんにとってまさに命綱です。しかし、赤ちゃんが生まれると、その役目は終わりを迎えます。ここでは、出産時のさい帯の切断から、出産後の赤ちゃんの「おへそ」のケアまで、詳しく解説します。

さい帯の切断はいつ誰が行うのか

出産という大仕事を終えた後、さい帯はどのように扱われるのでしょうか。多くのママやパパが気になる切断のタイミングや方法について見ていきましょう。

切断のタイミング:「早期」と「遅延」

さい帯を切断するタイミングには、主に2つの方法があります。

  • 早期さい帯結紮(そうきさいたいけっさつ)
    赤ちゃんが生まれてすぐ、一般的に1分以内にさい帯をクランプ(鉗子という器具)で留めて切断する方法です。これまで日本の多くの産院で行われてきました。
  • 遅延さい帯結紮(ちえんさいたいけっさつ / DCC: Delayed Cord Clamping)
    赤ちゃんが生まれた後、さい帯の拍動が自然に止まるのを待ってから(通常1〜3分以上)、切断する方法です。拍動している間、胎盤に残っている血液が赤ちゃんへと送られます。これにより、赤ちゃんが受け取る鉄分の量が増え、新生児期から乳児期の貧血を予防する効果が期待できるとされています。世界保健機関(WHO)も、赤ちゃんの状態が良好であれば遅延さい帯結紮を推奨しています。

ただし、赤ちゃんの状態が良くない場合や、緊急の処置が必要な場合は、早期に切断されることもあります。どちらの方法になるかは産院の方針や出産時の状況によって異なるため、希望がある場合は妊娠中に医師や助産師に相談しておくとよいでしょう。

誰が切るの?パパもできる?

さい帯の切断は、通常は医師または助産師が行います。ゴムのような独特の感触があり、専用のハサミで切断します。

最近では、立ち会い出産の場合、記念としてパパ(パートナー)がさい帯を切断できる産院も増えています。希望する場合は、事前に産院に「夫によるさい帯カットは可能か」を確認しておきましょう。もちろん、無理に行う必要はなく、医師や助産師にお願いすることもできます。

切るときに痛みはあるの?

さい帯を切る様子を見て、「赤ちゃんやママは痛くないの?」と心配になる方もいるかもしれません。しかし、さい帯には神経が通っていないため、切断しても赤ちゃんやママが痛みを感じることはありません。安心して見守ってあげてください。

出産後のさい帯(おへそ)のケア方法と注意点

切断された後の赤ちゃん側に残ったさい帯は、クリップで留められます。この残った部分は、数日から数週間かけて乾燥し、自然にポロリと取れます。これが取れるまでの「おへそ」のケアは、新米ママ・パパにとって少し緊張する作業かもしれません。正しいケア方法と注意点を知っておきましょう。

さい帯が取れるまでの期間と基本的なケア

残ったさい帯は、生後1〜2週間ほどで自然に乾燥して取れるのが一般的です。ただし、赤ちゃんによって個人差があります。取れるまでのケアの基本は「清潔」と「乾燥」です。

  1. 清潔に保つ
    沐浴の際に、石鹸の泡で優しく洗い、シャワーでしっかりと洗い流します。汚れが溜まりやすい根元も丁寧に洗いましょう。
  2. しっかり乾燥させる
    沐浴後は、清潔なガーゼや綿棒で水分を優しく拭き取ります。特に根元は乾きにくいので、丁寧に水分を取り除いてあげることが大切です。
  3. 消毒について
    以前は消毒用アルコールで毎日消毒するのが一般的でしたが、最近では乾燥を妨げるとして、消毒は不要とする考え方もあります。ジュクジュクしている場合や、産院から指示があった場合にのみ行いましょう。自己判断せず、産院の指示に従うことが最も重要です。
  4. おむつに注意する
    おむつを付ける際は、おへそに当たって擦れたり、尿で濡れたりしないように、おむつの上部を外側に折り返してあげると良いでしょう。

おへそのトラブルと受診の目安

丁寧にケアをしていても、おへそがトラブルを起こすことがあります。次のような症状が見られた場合は、自己判断で様子を見ずに、かかりつけの小児科や出産した産院に相談してください。

症状考えられる状態対処法
おへその根元や周りが赤く腫れている臍炎(さいえん)
細菌に感染して炎症を起こしている状態。
自己判断で薬を塗ったりせず、速やかに小児科や産院を受診してください。適切な処置や抗生剤の処方が必要になる場合があります。
黄色っぽい膿(うみ)が出ている
おへそから嫌な臭いがする
さい帯が取れた後、赤い肉の塊のようなものができ、ジュクジュクしている臍肉芽腫(さいにくげしゅ)
さい帯が取れた後に、組織が盛り上がってできたもの。
少量の出血がにじむ程度ではなく、ダラダラと出血が続く出血ガーゼで圧迫しても止まらない場合は、すぐに医療機関に連絡してください。

さい帯が取れた後のケア

さい帯が自然に取れた後も、おへそが完全に乾くまではジュクジュクしていたり、少量の出血が見られたりすることがあります。完全に乾燥するまでは、沐浴後に水分を拭き取り、清潔を保つケアを続けましょう。通常は数日で綺麗に乾きます。

取れたさい帯は、赤ちゃんとママをつないでいた大切な証です。桐の箱などに入れて、記念として大切に保管するご家庭も多くあります。

さい帯血バンクという選択肢

出産と同時にその役目を終える「さい帯」と胎盤ですが、実はその中にある血液には、赤ちゃんの未来を救う可能性が秘められています。それが「さい帯血」です。ここでは、さい帯血を保管する「さい帯血バンク」という選択肢について詳しく解説します。

さい帯血とは?未来の可能性を秘めた血液

さい帯血とは、赤ちゃんがお腹の中にいる間、さい帯(へその緒)と胎盤の中に流れている血液のことです。このさい帯血には、体のさまざまな種類の細胞のもとになる「造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)」が豊富に含まれています。

造血幹細胞は、赤血球・白血球・血小板といった血液の細胞を作り出す能力を持っており、白血病や再生不良性貧血などの血液疾患の治療に役立てられます。近年では、脳性まひや低酸素性虚血性脳症などに対する再生医療・細胞治療への応用も期待され、世界中で研究が進められています。

さい帯血バンクの種類とそれぞれの特徴

採取したさい帯血を、マイナス196℃の液体窒素タンクで半永久的に保管する機関が「さい帯血バンク」です。さい帯血バンクには、目的や費用の異なる「公的さい帯血バンク」と「民間さい帯血バンク」の2種類があります。それぞれの特徴を理解し、ご家庭の方針に合った選択をすることが重要です。

項目公的さい帯血バンク民間さい帯血バンク
目的第三者の治療のための「寄付」赤ちゃん本人や家族の将来に備えるための「保管」
所有権バンクに帰属(一度寄付すると返還されない)契約者(赤ちゃん本人や家族)
費用無料有料(申込金・登録料などの初期費用と、長期の保管費用が必要)
利用対象さい帯血移植を必要とする患者さん(血縁問わず)原則として保管を依頼した赤ちゃん本人やその家族
保管基準厳格(細胞数や感染症の有無など国の定めた基準を満たした場合のみ保管)各バンクの基準による(比較的柔軟な場合が多い)
採取できる産院提携している産科施設に限られる全国の多くの産科施設で対応可能(事前にバンクへの確認が必要)

公的さい帯血バンクへの「寄付」という社会貢献

公的さい帯血バンクは、国の許可を得て運営されている非営利組織です。ここで保管されるさい帯血は、骨髄バンクと同様に、広く一般の患者さんのために使われます。費用はかからず、誰かの命を救うことにつながる尊い社会貢献と言えるでしょう。

ただし、寄付できるのは公的バンクと提携している産院に限られます。また、採取したさい帯血が国の定める保管基準(血液量や細胞数など)を満たさない場合や、お母さんの健康状態によっては、寄付したくても保管されないケースもあります。

民間さい帯血バンクで「わが子の未来」に備える

民間さい帯血バンクは、有料でさい帯血を保管するサービスです。一番の目的は、赤ちゃん自身や家族が将来、病気の治療や再生医療で必要になったときのために備えることです。いわば「命の保険」のような存在と考えることができます。

公的バンクと異なり、所有権は契約者にあるため、必要なときに自分たちのために使用できます。また、多くの産院で採取に対応しており、保管基準も比較的柔軟です。ただし、申込金や保管料といった費用が発生するため、契約内容や運営会社の信頼性などをしっかりと確認した上で、慎重に検討する必要があります。

さい帯血バンクを検討する際の注意点

さい帯血の採取は、出産時にしかできない一生に一度のチャンスです。いざ出産というタイミングで慌てないためにも、妊娠中期頃から夫婦でよく話し合い、情報を集めておくことが大切です。

まずは、出産予定の産院がさい帯血の採取に対応しているか、公的バンクと民間バンクのどちらに対応しているかを確認しましょう。その上で、それぞれのバンクから資料を取り寄せ、メリット・デメリットを比較検討し、ご自身の価値観や家庭の状況に合った選択をしてください。

まとめ

さい帯は、お腹のなかの赤ちゃんとママをつなぎ、栄養や酸素を届ける大切な命綱です。妊娠中、多くの妊婦さんが心配される「さい帯巻絡(さいたいけんらく)」は、そのほとんどが分娩に大きな影響を及ぼすものではなく、過度に不安になる必要はありません。

しかし、まれに「さい帯下垂・脱出」や「真結節(しんけっせつ)」など、迅速な対応が必要となるトラブルも存在します。これらのトラブルには確立された予防法がないため、定期的な妊婦健診をきちんと受けること、そして日々の胎動の変化に注意を払うことが、万が一の異常を早期に発見するために最も重要です。

出産後のさい帯ケアや、将来の選択肢としてのさい帯血バンクについても知っておくとよいでしょう。さい帯について正しい知識を持ち、不安な点はかかりつけの医師に相談しながら、穏やかな気持ちで出産に臨んでください。

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